健診結果登録の自動化について
閲覧にはパスワードが必要です
中島クリニック 鑪様

健診結果登録の自動化について — ご質問への回答

2026年9月3日 / 合同会社AIのある暮らし 岩本和也

クリニックの事務スタッフとAIが一緒に健診結果を扱うイメージ
健診結果の登録を、AIといっしょに。まずは全体のイメージから

ご相談の確認

まず、いただいた内容を以下のとおり理解しております

きっかけ
Codexを使い、オンライン塾の問題集PDFの電子化・抽出を自動化。効果を実感。
応用したい業務
院内の「受診者マスター登録」「健診結果PDFのカルテ紐付け」
扱うデータ
要配慮個人情報(健診結果)
法律上、特に慎重な扱いが求められる情報です

ご質問(4点)

以下の4点として整理し、順にお答えします

  • 技術的に可能か PDFからの抽出→マスター登録という、塾の問題集自動化と同じ構造が院内業務でも成立するか
  • 要配慮個人情報を安全に扱う仕組み・運用 健診結果という大事な個人情報を生成AIに渡してよいのか、どう守るか
  • 生成AIかローカルRPAか どちらの方式を軸にすべきか
  • 実現時の構成と進め方 具体的にどんな構成で、どの順番で作っていくか

ご質問への回答

それぞれの回答の下に、根拠になる記事・動画を添えています(押すとページ下部の要約カードに移動します)

01技術的な可否
技術的には十分に可能。ただし健診結果PDFは検診機関ごとに書式がバラバラなことが多く、そこが塾のPDF自動化より一段手間のかかるポイント。「読み取れるか」自体は小さな検証で数日以内に白黒つけられる。
02安全な取り扱い
健診結果は「要配慮個人情報」という、法律で特に慎重な扱いが求められる情報にあたります。そのため、氏名をAIに見せる前に、いったん別の番号に置き換えてしまうのが基本の考え方です。以下、実際に手を動かす場合のやり方と、気をつけたいポイントを具体的に書きます。
💡 「仮名化」ってなに? 氏名を「山田さん」のまま扱うのではなく、「No.001」のような管理番号に一時的に置き換えることです。番号と本名の対応表さえ厳重に管理しておけば、AIには番号だけを見せて、あとから人間の手で本来の受診者に戻せます。
実名は金庫にしまい、番号に置き換えた書類だけをAIに渡すイメージ
実名は金庫へ、番号だけAIへ。これが「仮名化」の基本です
実際の作業の流れ(ここまで具体的にやればOKです)
  1. 健診結果PDFを受け取る(紙の場合はスキャンしてPDF化)
  2. Excelなどで「管理番号(No.001, No.002…)と氏名の対応表」を1つ作る。これは鑪様の手元だけで管理し、絶対に外に出さない
  3. PDFの氏名・生年月日が書かれた部分を黒塗り(マスキング)するか、その部分だけ管理番号に書き換えたコピーを用意する(検査数値などの中身はそのまま残す)
  4. 氏名を隠した状態のPDF(管理番号だけが書かれたバージョン)を生成AIに渡し、検査数値の読み取り・下書き作成をしてもらう
  5. 鑪様(または担当の方)がAIの作った下書きを目で見て確認し、②の対応表を見ながら本来の受診者に戻して、受診者マスター・カルテに登録する
  6. 「いつ・誰が・どのPDFを処理したか」を、簡単な記録でよいので残しておく(あとで確認を求められたときのため)
  7. 作業に使った一時ファイル(黒塗り前のPDFや対応表のコピーなど)は、処理が終わったら削除する
実名の書類・対応表・ログイン情報はAIに渡さない、という注意ポイントのイメージ
この3つはAIに渡さない:実名の書類・番号と名前の対応表・ログイン情報
特に気をつけたいポイント
  • 無料版・ブラウザ版のChatGPT/Claudeに、氏名入りのPDFをそのまま貼らない(入力した内容がAIの学習に使われる設定になっていることがあります)
  • 使うなら、学習に使われない設定・ログの扱いがはっきりしている法人契約のプラン(API/Enterprise版など)を選ぶ
  • ②で作った「対応表(番号⇄氏名)」は、生成AIはもちろん、どこにも一切渡さない(これが漏れると番号に置き換えた意味がなくなります)
  • PDFのファイル名にも氏名が残っていないか確認する(本文だけ黒塗りしても「山田太郎_健診結果.pdf」のようなファイル名のままだと意味がありません)
  • 電子カルテそのもののログインID・パスワードは、AIツールに一切渡さない(先日の週刊AIニュースでも触れた一線と同じ考え方です)
03生成AI/ローカルRPA
どちらか一方に決めるという話ではなく、AIと人(またはルールで動く単純な仕組み)とで、得意なことを分担するのが現実的です。具体的にどちらに何を任せるか、以下に整理しました。
💡 「ローカルRPA」ってなに? 「毎回同じ手順を、決まった通りに自動で繰り返してくれる仕組み」のことです。AIのように文章や画像の意味を判断するのは苦手ですが、決まった作業を正確に・何度でも同じように行うのが得意です。
AIが下書きを作り、人が確認して判子を押す役割分担のイメージ
AIは下書きまで、確認と確定は人。これが役割分担の基本です
🤖 生成AIに任せる(得意なこと)
  • 検診機関ごとにバラバラなPDFの書式を読み取る(表記の違いを吸収する)
  • 検査項目・数値を読み取って下書きを作る
  • 手書きに近い記載でも、おおまかに内容をつかむ
  • 大量のPDFをざっと仕分け・要約する
✅ 決まった手順・人に任せる
  • 受診者マスターへの本登録(間違いなく本人と紐付けること)
  • カルテへのPDF添付・保存の実行
  • 番号⇄氏名の対応表の管理
  • 登録する前の、最終的な数値の見直し確認
なぜ分担するのか。生成AIは「読み取り」は得意ですが、100%間違えないとは言い切れません。一方で、決まった手順どおりの単純作業は、AIより機械的な仕組み(ローカルRPA)の方が安定していて、あとから見直しもしやすい領域です。この違いに合わせて、「AIは下書きを作るところまで、最後の確定は人(または決まった手順の仕組み)」と役割を分けるのが、ここでの分担の考え方です。
AIが扱う範囲(仮名化ずみ) 人が確定する範囲 健診結果PDF (氏名あり) 仮名化 (氏名→仮ID) 生成AI (抽出・下書き) 人の確認 (確定) カルテ登録 (氏名を復元)
健診結果PDFは氏名を仮IDに置き換えてからAIに渡し、AIが作った下書きは必ず人が確認・確定してから登録します。
04構成と進め方
①匿名化サンプルでの抽出精度検証 → ②個人情報に触れない解析ロジックの先行実装 → ③仮名化ステップを挟んだ生成AI呼び出し → ④人の確認込みの半自動登録フロー → ⑤運用ルールの文書化、の順で小さく検証しながら進めるのがおすすめです。まだ詳細な設計図というよりは大枠のイメージですが、判断の材料になりそうな記事・動画もいくつか集めましたので、下に参考として添えています。
検証・実装・仮名化・確認・ルールの5段階を小さく始めて登っていくイメージ
①検証 → ②実装 → ③仮名化 → ④確認 → ⑤ルール化。小さく始めて育てていきます
匿名化サンプルで 精度を検証 個人情報を含まない ロジックを先行実装 仮名化を挟んで AI呼び出しを限定 人の確認込みの 半自動登録フロー 運用ルールを 文書化
本番データではなく匿名化したサンプルから始め、AIが扱う範囲を限定しながら小さく検証していきます。

参考資料

回答の根拠にした動画4本と記事5本です。どの質問に関係するかをラベルで示し、内容をやさしい言葉で要約しました

▶ YouTube(4本)— 再生ボタンでこのページ内で見られます
医療現場でClaude・ChatGPTを使うと違法?セキュリティの真実を徹底解説
FRENVOX(現役理学療法士×AI)
ご質問② 安全な扱いFRENVOX(現役理学療法士×AI)11分40秒まずこれ

「医療現場でChatGPTやClaudeを使うと違法なのか?」に、現役の理学療法士の方が約12分で答える動画。

  1. AIに入力する行為は、外部の会社に個人情報を「渡す」ことになる場合がある
  2. 関係する法律の条文を順に解説:要配慮個人情報/安全管理措置/第三者提供/外国の会社への提供
  3. 「クラウドサービスなら例外になるケース」の考え方
  4. 法人向けプラン(学習に使わない契約・データを保持しない設定・医療向け契約)を選ぶ理由
  5. 概要欄に、参照した法令・ガイドライン・各社規約へのリンク一覧

こんな使い方ご質問②の土台。まず最初にこれを見ると「何がダメで、何なら大丈夫か」の線引きが分かります。

再生ボタンでこのページ内に動画が開きます。開かない場合は右のボタンからどうぞ。 YouTubeで開く ↗
医療機関のセキュリティは何が変わったのか|ガイドライン第7.0版と重要インフラ
AcraneSystem
ご質問② 安全な扱いAcraneSystem16分

2026年の春〜夏に動いた「医療機関のセキュリティの前提」を、12のチャプターで整理した約16分の動画。

  1. 海外で起きた出来事と、日本政府の対応
  2. 「重要インフラ」と「基幹インフラ」の違い
  3. 2026年6月、医療分野が基幹インフラに追加された
  4. 厚労省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」第7.0版との関係
  5. まとめ:これからは「守れているか」に加えて「説明できる状態か」が問われる

こんな使い方「誰が・いつ・何を承認したかを記録に残す」をおすすめした背景です。全部覚える必要はなく、流れをつかむ用に。

再生ボタンでこのページ内に動画が開きます。開かない場合は右のボタンからどうぞ。 YouTubeで開く ↗
Claude Codeの必須セキュリティ対策 / AIは万能ではない / 非エンジニアでも実践可能
ウェブ職TV@AIセキュリティ専門
ご質問③ AIの使い方ウェブ職TV@AIセキュリティ専門17分

CodexやClaude Codeを使い始めた人向けに、最低限のセキュリティ対策を6つにしぼった約17分の動画(エンジニアでなくてもOK)。

  1. 機密ファイルをAIから見えない場所に置く
  2. 作業履歴のファイルを消す
  3. APIキー(サービスの合鍵のようなもの)を直接書かない
  4. サンドボックス(AIが触れる範囲を区切る仕組み)を有効にする
  5. AIへの指示書ファイルを活用する
  6. 作業のたびに文脈をリセットする

こんな使い方すでにCodexをお使いなので「今の使い方で抜けがないか」のチェックリストに。まず①③④の3つだけでも。

再生ボタンでこのページ内に動画が開きます。開かない場合は右のボタンからどうぞ。 YouTubeで開く ↗
11:03から再生
社内向けアプリをGASで作ったら、爆速公開できた。
ジェネトピ|AIラジオ
ご質問① 技術的な可否ジェネトピ|AIラジオ19分17秒(11:03〜が該当)実演が分かりやすい

Claude Code×GAS(Googleスプレッドシート等を自動で動かす仕組み)で、サーバーもデータベースも用意せずに社内向けの小さなアプリを短時間で公開する実演(約19分)。

  1. 前半:経費精算アプリを作る事例
  2. 後半(11:03〜):ダッシュボードをAIに作らせる事例 ← 今回の「受診者マスター登録画面」に一番近い部分
  3. ポイントは「大がかりなシステムを最初から作らない」
  4. スプレッドシートを台帳代わりにして、その上に小さな入力画面を乗せる発想

こんな使い方院内で試すときの「まず動くものを小さく作る」空気感をつかむ用。ただし健診結果を扱うので、回答②の仮名化を必ず挟んでから。※こちらのリサーチで見つけた動画です。

再生ボタンでこのページ内に動画が開きます。開かない場合は右のボタンからどうぞ。 YouTubeで開く ↗
📝 note(5本)— カードをクリックすると記事に飛びます
法律要配慮個人情報とは

要配慮個人情報――「特に丁重に扱え」と法律が名指しした情報たち

ご質問② 安全な扱いくろ|AI副読ノート

「要配慮個人情報」とは何かを、法律の条文からかみ砕いて説明した記事。今回のご相談の出発点になる言葉です。

  1. 個人情報保護法は「漏れると差別や不利益につながりやすい情報」を要配慮個人情報として特別扱い
  2. 法律本文に6項目(人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴・犯罪被害の事実)
  3. 施行令でさらに5項目を追加、合計11項目
  4. その中に「健康診断等の結果」「保健指導・診療・調剤の実施」がはっきり書かれている
  5. 「犯罪の経歴」と「刑事手続が行われたこと」は別物、などのコラムも読みやすい

こんな使い方健診結果PDFは「法律が名指しで慎重に、と言っている情報」。院内で説明を求められたときの根拠にこの記事を。

設計現場発AIアプリの受け入れ方

医療機関におけるバイブコーディング受け入れアーキテクチャ ― 2026年夏時点の設計メモ

ご質問④ 進め方がらむまさら(医療情報システム歴25年)

医療情報システム歴25年の方による「現場がAIで作った便利ツールを、情シスはどう受け入れるか」の設計メモ。鑪様の状況とほぼ同じ構図です。

  1. 出発点:「禁止しても現場は隠れて使うだけ」
  2. 怖さを4つに分解:患者データがPCに散らばる/誰が使ったか記録がない/作った人がいなくなると直せない/責任がはっきりしない
  3. 答え:アプリを1本ずつ審査せず、「データと認証の通り道」を情シスが用意する
  4. 具体的には、共通ログイン/読み取り専用のマスタ情報/現場アプリ用のデータ置き場、の3つを持つ院内共通の土台

こんな使い方少し硬い文章ですが、この先、院内(情シスや上長)に相談するときの「共通言語」になります。

構成クラウド・閉域・オンプレの選び方

医療機関の生成AI活用ガイド|患者情報を扱うクラウド・閉域・オンプレの選び方【2026年8月最新】

ご質問③ AIの使い方株式会社AIworker

「患者情報を扱うなら必ず院内サーバー(オンプレ)」ではなく、6つの軸で構成を選ぶ、という整理。2026年8月にガイドライン第7.0版を踏まえて更新済み。

  1. 判断の軸は6つ:目的/契約/保存場所/再委託先/アクセス権限/ログ
  2. その上で、クラウド/閉域(つながる先を限定)/オンプレを選ぶ
  3. 生成AIは検索・要約・下書きまで。診断や記録の確定は医療職が担う
  4. 小さな業務から試し、出典確認・誤回答時の停止・障害時の切り離しを決めてから電子カルテ連携へ
  5. ローカルLLM・RAGなどの用語説明も丁寧

こんな使い方回答③(役割分担)と④(小さく始める)の考え方の元になった記事。ご質問③を考える材料に。

事例院内AIの実例と費用感

医療機関のローカルLLM。3省2ガイドラインと院内オンプレAIの現在地

ご質問③ AIの使い方土門大貴/daikidomon

「院内に置いたAI(ローカルLLM)」という選択肢を、実際の病院の事例と費用感まで含めて整理した記事。

  1. 「ガイドラインが生成AIを禁止している」は誤読。決まっているのは「どこに置き、誰に委託し、どのネットワークで扱うか」の条件
  2. 織田病院(佐賀):退院時看護サマリー作成が平均16分 → 7分半
  3. 三重大学病院:電子カルテ要約を院内サーバーで実証
  4. 共通点:入口は文書作成・要約/患者情報は院内に閉じる/生成物は必ず人が最終確認
  5. 中小の医療機関は「患者情報を使わない用途から1台構成で」が現実的。費用はお試し規模で数百万円〜

こんな使い方「小さく始める」という提案の裏付け。将来「院内に置く」を検討するときの費用感の目安にも。

ひな形AI利用ルールのA4テンプレ

薬局のAI利用ルール、ゼロから作らなくていいです|A4一枚のひな形(Word編集可)つき

ご質問② 安全な扱いちろ|薬剤師

薬局向けですが、院内の「AI利用ルール」をA4一枚に落とし込むひな形(PDF/Word)付きの記事(有料・500円〜。前半は無料で読めます)。

  1. 夜遅くに患者さんの状況をAIに細かく入力してしまう架空の場面から始まる
  2. 「名前を消したから大丈夫」が通用しない理由3つ:年齢・地域・病名の組み合わせで特定できる/病歴は扱いが厳しい(要配慮個人情報)/入力=外部への提供とみなされることがある
  3. 2026年7月公布の改正個人情報保護法(課徴金の導入)にも言及
  4. 日本病院薬剤師会の生成AI利活用ガイダンスも紹介

こんな使い方回答②の「運用ルールの文書化」をゼロから作らずに済ませたいときの叩き台。無料部分だけでも一読の価値があります。